血の味

2005年6月24日 読書
ISBN:4101235147 文庫 沢木 耕太郎 新潮社 2003/02 ¥500
主人公は、無口な父親と2人で暮らす中学3年生である。走り幅跳びの選手として期待されていたが、突然跳ぶことができなくなり、クラブ活動を引退。学校では教師から目をつけられ、友人関係におもしろみも感じず、受験勉強に明け暮れる日々を送っていた。そんなとき知り合ったのが、奇妙な女装姿の男だった。はじめは気味悪がり、距離を置こうとしていた主人公だが、男が過去にプロボクサーだったと知り、彼の数々の戦歴に興味を持つようになる。

家を出ていった母親がいつも口にした「勇敢な」男性像は、主人公の理想でもあった。その強く完璧なものへの憧れは、この年ごろならではの純粋で一途な感情だ。そして理想が大きければ大きいほど、それが叶わなかったときの失望感は多大である。跳べなくなった少年、過去の栄光にすがるボクサー、何かをあきらめたような父親という、3人を通して、理想と現実との落差がかなしく描かれる。


この子、嫌。この子の父も嫌。
簡単に言うとそれだけのことだ。

積極的に、理解したいと思う時が来るのだろうか。
せめて「理解してあげたい」と、
恩着せがましい気持ちにくらいは、なるのだろうか。

今はそういう気にならない。
今の私にはまだ、心のひだを理解することができないんだ。
そういうことだ。

コメント